コラム・特集

2.3 タスクの源泉

IEハンドブック
第2部 職務とジョブ・デザイン

第2章 職務設計

2.3 タスクの源泉

職務はいくつかのタスクと,タスクが達成される条件とから成り立っている。これらのタスクは,組織の3つの次元を反映するいくつかの源泉から引き出される。

生産と技術のニーズ
タスクを生み出すもっともはっきりした源泉は,組 織 の生産と 技術のニーズ(production and technological needs)である。この源泉から,仕事の実行,検査および評価に関連して,タスクを次のように分類することができる。①段取り,操作および保全,②技術情報の記録,処理および検索,③材料の運搬と取り扱い,④生産工程に不利な影響を及ぼす技術的変数の統制,などである。生産と技術システムのタスク要件に影響するいくつかの仲介要因がある。技術システムの不確実性あるいは不安定性は,生産システムにかかわる人々の役割に重荷を課すことになる。技術的不確実性は,設備の信頼性,インプットとアウトプットの変動性,そして事象の予測不可有断生によって影響される。さらに技術革新の割合は,労働力が将来要求される特定のタスクについての長期的な不確実性を生み出す。技術の不確実性,オートメーションの程度,そして生産の規模(注文生産から大量生産まで)は,また別の仲介要因である。

組織のニーズ
商品の生産やサービスに直接係わるタスクに加えて, タスクの別の源泉が組織のニーズ(Organizational needs)から生じる。これらのニーズには,諸活動の調整,社会秩序の維持,縮図社会としての組織のマネジメント,環境条件の変化に組織を短期的そして長期的に適応させることなどが含まれている。組織のニーズは,労働力の雇用と訓練,意思疎通,知識の発見と交換,そして対人関係および組織の葛藤の建設的解決に関係したタスクを要求する。

組織のタスク要件は,次の諸要因によって影響される。つまり,労働転職率,欠勤率,労使契約,組織の短期的。長期的目標,これらの目標の安定性,財政的要件,そして法律的ないし規則的要件,などである。最初の2つの変数は,仲介的効果と成果への効果の両効果を持っている。一方では,うまく設計されていない職務は,労働転職,欠勤,そして苦情などをもたらす。他方では,頻繁な転職と欠勤は,そ の原因とは関係なく,雇用,訓練,調整,そして評価に対するより大きなニーズを生み出す。

個人のニーズ
タスクの第3の 源泉は,個人のニーズ(individual needs)から生じる。人々は生理的,心理的,社会的,そして経済的欲求を持っている。これらの欲求のそれぞれは,その特定の方向と強度において,個人によって大きく異なっている欲求は,パーソナリティ,一体感 , 資格,そして組織の外部から生じるライフスタイルの好みの関数である。たとえば,若年作業者によって表明される自由行動あるいは自己統制の欲求は,作業者が自分自身でできる意思決定の要請の強さに影響する。これらの欲求は,過去経験,期待,社会的準拠集団,流行,風習,価値観,そして文化によって影響される。組織だけが個人の欲求を提供するのではない。多様な欲求を満たすのに人々を援助する別の制度が社会にはある。

職務設計において考慮される必要のある個人の最も明白な欲求の1つは,金銭的報酬の欲求である。さらに,組織は,従業員の安全,健康,快適性,昇進,キャリア向上,同僚の作業者との社会化過程,そして職務満足の諸欲求に関心をはらわなくてはならない。これらの欲求は,「労働生活の質」(quality of working life)という題目の下に 職務設計の文献で議論されてきている。図 表2.2.3に,設計者の補助として役立つように,QWL基準の包括的なチェックリストを示した。高い労働生活の質を実現することを狙いとしている職務設計は,より良い職務保証,公平性,報酬,およびすべての従業員が明確に持つようになった,心理的欲求を満足することなどを実現する方向にある。以下の欲求リストは以前にエンゲルスタッド(Engelstad)によって述べられたものであるが,デイビスはこれを拡大して満足の個人的違いをこれに取り入れている。

1.厳しい忍耐とは別の観点から合理的に負担を与え (reasonably demanding),しかも最小限度の多様性(variety)(単なる新奇性ではない)を提供する仕事の内容に対する欲求。
2.職務について学習でき,学習を継続できるという欲求。このことは最低限,成果の明細,パフォーマンスの標準および結果の知識(フィードバック)を必要とする。
3.個人が自由に行使できる意思決定のいくつかの領域に対する欲求。この範囲内では,自分自身の自由裁量を行使でき,客観的成果に基づいて評価される。
4.職場での社会的支持の欲求――職務を遂行する上で必要な時には,他の人の援助に頼ることができ,そして必要ならば,同情と理解が得られるだろうということを個人が分かっている欲求。
5 自分自身のパフォーマンスと貢献度について,組織内で承認される欲求。
6.個人が行っているものと個人が組織外の社会生活で生み出しているものを関係づけることができるという欲求。
7.職務がある種の望ましい将来,すなわち,袋小路の職務ではなくして,有効な経歴経路に導くだろうことを感じる欲求。
8.自分の欲求を満足させることができ,自分の目標を達成することのできる選択権が,組織内で利用可能であるということを知っている欲求。すなわち,職務の種類に関しての選択権,仕事の分権的編成,多くの経歴経路,異なる進度で進む選択権など。

機械に注油する,休暇届の書類に記入するといったようなただ1つの欲求のタイプに明白に分類されるタスクもあれば,いくつかの欲求に役立つタスクもある。たとえば,毎週の作業スケジュールを計画するタスクは, 生産のニーズ,組織のニーズ,そして個人のニーズのそれぞれの満足を考慮しなければならない。職務の設計は, 職務担当者が割り当てられたタスクを遂行するときに関連するニーズをすべて考慮する職務担当者の能力を高めることが重要である。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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