コラム・特集

1.6 職務分析結果の文章化

IEハンドブック
第2部 職務とジョブ・デザイン

第1章 職務と課業の分析法

1.6 職務分析結果の文章化

所定の職務分析過程を経て作成される最終製品は,幾つかの形の文章で記述された資料で構成される言うまでもないが,分析員がそうした資料に文章化する目的は,できるだけ信頼でき,しかも妥当なかたちで,意図する意味を伝えることに置かれるべきである。方法の違いで特徴づけられる職務分析資料の,その性質にみられる若千の違いについては,後の章で考察し,例示する。

しかしながら,ここでの目的に照らして,異なる方法で行われた職務分析に関しても,様々なやり方で応用可能な,職務分析結果の文章化についての3つの側面に触れておきたい。それらの側面とは,情報の組立て,文章内容とその構成,用語の選択,の3側面である。

情報の組立て

職務記述資料の組立ては,採用された職務分析法と,取り上げた職務の性格とに依存する。たいていの職務分析資料の場合,情報は職務の主要部分または職務活動が,一定の順序を持っている時には,その順序に従って組み立てられる。他に組み立てる論理または根拠の存在しない場合には,様々な活動のもつ重要性の判断もしくは,それに使う時間の長さに従って,記述情報を配列してもよい。

ある種の構造的職務分析手続,たとえば,課業を列挙した課業質問調査票などを採用した場合には,それらの課業は,職責(duties)もしくは機能的連関によって整理し,アイウエオ順にでも配列すればよい。

文章内容と構成
職務記述に用いる文章の内容は ,採用した方法によって大きく異なる。たとえば,ある種の課業・方法分析手法の場合には,文章は 極めて簡単で,動詞(三人称,現在形で)と目的語(目的語を修飾する形容詞がつくこともある)だけを内容とする。たとえば,「アンテナを取り付ける」とか「動力鋸を操作する」といったような表現となる。

しかしながら,通常の職務記述書の場合には,文章構成はたとえば,次の例のように複文,重文,もしくは複―重文になることもある。
・複文(主節と1つ以上の従属節からなる)―「使用中の管が不良であることが検査で分かった場合には,その管を取り替える」

・重文(従属節がなく,2つ以上の主節からなる)一「リムからタイヤを取りはずして,欠陥を調べる」

・複―重文(2つ以上の主節と最低1つの従属節からなる)一「月末または収支報告がすべて集まった時点で,各勘定項目一覧を作成し,合計額を計算する」

職務記述資料との関連で留意すべきことは,ある場合, 後で例示する課業質問紙にみるように,動詞が一人称現 在形をとり,たとえば,「ラジエーターの小さな洩れ口をハンダ付けする」と表現されることもあるということである。そのような場合,職務在籍者が主語「私は」である。ある場合には,叙述が完全な文章になっていないこともある。これはとくに,ある種の構造的な職務分析手続の場合に言えることで,工具,装置の項目に,たとえば「吹管」とか活動の記述は「鍵盤の使用Jといった表現になる。

表現の選択
職務記述資料を作成する際,分析員は表現の選択に留意して,簡潔さという望ましい目的を達成する一方,意味の曖昧になる可能性を最小限に抑える工夫をこらすべきである。言葉遣いに関する二,三の指針として,次のようなものがある。

・難しい言葉よりやさしい言葉を。

・抽象的なものより具体的な言葉を。

・婉曲表現より単純な表現を。

・長い文章より短い文章を。

・特に重要な事柄については,読ませる相手に理解できると思われる場合に限って,専門用語を使用すること,そうでなければ,そうした用語を避けるか,注釈をつけること。

・修飾語は,意見を織り込み勝ちになるので,その使用は控える。しかし,合理的,客観的な証拠があって,しかも重要な意味を付加するのであれば,修飾語を使用してもよい。

動名詞と分詞の使用は,極力控えること。これらの言葉は,動詞から派生した言葉で,普通,最後が「―tion」「―ion」「-ing」 「―ment」で終わる言葉のことであった文章に出てくる。

分詞は,形容詞として用いられる動詞であり,「焼きあがるパンを見守りながら……」といった文章に出てくる。しかしながら,動名詞や分詞の使用が記述を最高に効果的,簡潔にする方法である時もある。

意味の厳密さに欠ける言葉の使用は控えること。たとえば「条件」「状況」「促進」「不適切」といった言葉である。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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