コラム・特集

1.5 職務分析における観察と面接

IEハンドブック
第2部 職務とジョブ・デザイン

第1章 職務と課業の分析法

1.5 職務分析における観察と面接

作業中の職務在籍者を観察することと,面接を職務在籍者,監督者あるいはその職務に詳しい第三者を相手に実施すること(いずれか一方だけの場合もある )とが,色々ある職務分析の中核となっている。

職務分析過程における面接

面接を実施することは,職務分析の様々な方法のいずれにも重要な部分を占めているので,分析員になる者は,個々の面接で最大限の情報を入手することを可能にする,面接技能を伸ばす必要がある※。面接には,面接員と被面接者とがいるのが普通であるけれども,ある場合には,いずれかの立場もしくは両者の立場に立つもっと多く人たちが関与する場合もある。

面接法は,「構造化」程度の点で,非構造的なものから ,高度に構造化されているものまで,多岐にわたっている職務分析の過程では,通常,半構造的な面接が最適である。それはとくに,面接員がある職務の多様な側面の一つ一つについて情報を引き出すために用意された職務分析票を使用する場合に言えることである。

そうした分析票の代表的な形は,あらかじめ用意された質問文または情報入手項目からなっている。職務分析票は,基本的な構造を提示し,それをめぐって面接が実施できるようになっているけれども,面接員は,被面接 者の人柄や問題にしている職務の性格に合わせて,自分なりの面接法を採用する心構えをもつべきである。

望ましい面接の原則
望ましい面接のあり方に関しては,3つの基本原則がある。

第1は ,主導権は面接員が常にとるべきであるが,被面接者を威圧するものであってはならないこと。
第2に ,面接の物腰・態度は,被面接者に対する誠意 と心からの関心を表すものでなければならないこと。
第3は ,面接員が,欲しい情報を入手する目的に向けて誘導すべきであること。

面接技能の開発
面接技能の基本は,大部分が適切な質問を,適切な時に,適切な言葉で選ぶことにある。

しかし,適切な質問を行うことのほかに,被面接者の 応答を積極的に聴く能力を面接員は伸ばす必要がある。

このためには,言われていることを理解するだけの感受性と,記録をとるべき要点を想起する能力を必要とするカーリロフたちは ,面接者の行う質問内容は次のような基準でその適否をチェックできることを示唆している。

・質問内容は,そ の分析の目的に関係のあるものでな ければならない 言葉は明瞭で,意 味の曖味でないものを使用すべきである。

・質問は回答を誘導するようなものであってはならない。つまり特定の回答が欲しいことを匂わせるべきではない。

・質問は,ある回答の仕方が他のものより社会的に望ましいものであると受け取られるような意味で,仕組まれたものであってはならない。

・被面接者に期待しても無理な知識,ま たは情報を求 めるような質問であってはならない。

・被面接者を憤慨させるような個人的,あるいは私事にわたるような事柄を入れるべきではない。

問いかける言葉は,被面接者に何でも話せるよう勇気付けるようなものであるべきである。 質問に明確さを欠くのは,質問の意味が飲み込めなかったり,耳新しい言葉が使われていたり,あるいは表現力に欠けていることなどによるものであろう。いかなる場合であれ,面接員はその要点を明確にするように,簡潔で巧みな問いかけをしながら,さらに質問を掘り下げていくべきである。

カーリロフたちの示唆するところによれば,面接員は返答に耳を傾けながら,次のような4つのうちのいずれかの心配りを働かすことが可能だとしている。

・話し手の先を考える.換言すると,話がどの方向に進んでいるか,またその時に出た言葉の端々から,どのような結論が引き出せるかを予想しようと努めること。

・被面接者の指摘する事実を裏付ける証拠を,「 この点は妥当か? その証拠は完全か?」 と自問しながら秤量する。

・話を聞きながら,言外の意味を探る。

・顔の表情,身振り,声の調子,語気など,言葉外の表現に細かな注意を払い,言葉の意味をそのまま受け止めてよいかどうかを見分ける。

面接の一般的指針
良い面接を行うための簡単な要領書が存在しないという認識から,職務分析員になる人にとって何か役に立つであろう指針ないし留意事項を示すと次のとおりである。

面接前の準備

1.十分に練られた趣旨の発表を行うことによって,被面接者の関心を前もって喚起しておき,面接の手配について,前もってその監督者から被面接者各人に間違いなく相談するようにしておくこと。

2.面接に関して,個人の秘密が保たれるよう,適当な場所を選定すること。

3.面接者が被面接員より「地位Jの高いことを誇示 する目印になるような肩書などの使用を避け,そ うし たことを最小限に留めること。

面接の開始

1.前もって作業者の氏名を調べておき,相手をくつろがせること。面接者はまず自己紹介し,そのあとラポートが成立するまで,一般的で愉快な話題を話し合う時間を十分にとること。そしてお互いに緊張を解くこと。

2.なぜ面接が計画されたのか,何が面接で期待されているのか,作業者の協力が配置。相談用の職務分析資料の作成にどのように役立つのかを説明することによって,面接の目的をはっきりさせること。

3.いつも礼儀正しく,作業者の話の内容に心からの関心を示すことによって,作業者に話をする気にさせること。

4.面接内容は,被面接者が重視している目標に関連づけること。

 

面接の方向づけ

1.遂行すべき職責を論理的に,順序立てて作業者が考え,話できるように援助する。もし,職責が定まった順序で遂行されない場合には,最も重要な活動を最初に,次に重要なことを2番目にといった風に,機能別にその職責を説明するように求める。時たまにしか生じない職責や自分たちに固有の活動とはされていない部分についても説明を求めることたとえば,ときたまにしかしない機械の調整,修理,あるいは,まれに行う職責の中には,定期的もしくは緊急事態の時の活動,たとえば,年1回の在庫調べ,またはトラックから荷を降ろす応援作業などは含めないこと。

2.回答者が答えやすいような質問にすること。

3.その面接項目の中で予定していなかった事項については,その質疑応答を活発なものにするため,掘り下げ面接法(probing techniques)を活用すること。

・待ちの沈黙(an expectant pause)
・あいづちを打つ
・中立的な慎重な質問
・回答者の発言の要約・確認
・あるいは,一つの質問の繰り返し。

4.それぞれの質問に答えたり,答をまとめる時間を作業者に十分与えること。

5.質問の言葉は慎重に選び,答が「ハイ」,「イイエ」 だけで帰ってこないように工夫すること。

6.誘導するような質問は避けること。

7.面接は平易で,分かりやすい言葉で進めること。

8.被面接者に飾らない個人的関心を示すこと。

9.尊大であったり,へり下ったり,あるいは威圧的になったりしないこと。

10.面接は,むらなく一貫したペースで進めること。

11.分析に必要なあらゆるタイプの情報を洩れなく, 具体的に,間違いなく入手すること。

12.問題にしている職務の分析に関連がある場合には , 職務分析の中に他の関連職務との関係を含めること。

13.主題(分析に必要とされる情報)や時間の面か , 面接をコントロールすること。万一被面接者が主題から離れすぎた場合には,面接員は既に入手した情報を 要約することによって,本題に話を戻すこと。

14.面接は辛棒強く,被面接者の反応を考慮しながら一たとえば,神経過敏になっていないかどうか―進めること。

 

分析員は,作業者との間に親しくはあっても事務的な関係を築くように努めるべきである。これを成就するための定まったやり方というものは存在しない。分析員は,ラポートを作り,協力を引き出せるようなやり方で作業者を扱う技法を産み出す必要がある。

礼儀正しく,関心のある態度で分析を行い,作業者が言いたいことに充分耳を傾け,恩着せがましさや横柄さ のない分析員であるならば,作業者の信用,信頼をかち得て,望む情報を入手することが可能になるのが普通である。

分析員は,作業者の観察または面接されることに対して示す反応に気を配る必要がある。作業者の大部分は,分析中にいくらか神経質―少なくとも初めのうちは一になることが予想されるけれども,あがってしまったり,気を散らしたり,いらだったり,怒ったり,あるいは非協力的になる者は,継続的な分析の対象にすべきではない。そのような場合,分析員は同一職務の他の作業者を 選ぶか,その選抜を監督者に依頼すべきである。

職務分析に関係のない問題,たとえば,苦情,労使紛 争,安全・衛生の侵犯,および賃金格付問題(wage Classification problems)な どの問題については,職務分析員は議論すべきではない。もし,作業者がそうした話題を持ち出したならば,分析員はそれとなく話題をその職務の分析に戻すべきである。分析員は,作業の流し方,工場レイアウト,作業方法の改善や職務の設計に関して評論したりあるいは示唆したりすることは避けるべきである。

面接の終結

1.面接の終了に近づいていることを,質問の種類や声の調子で暗示すること 。
2.もし必要であれば,従業者から得た情報を要約し,その職務で遂行される 主要な職責や職務のそれぞれに ついての詳細な事項を指摘すること。
3.回答者の提供してくれた情報が貴重なものであることを指摘して言葉を結ぶこと。
4.親しい調子で面接を終了すること。

 

面接員のその他の心得

1.作業者の発言内容に関して議論しないこと。
2.労使関係のあり方に関わる苦情または紛争には , 何れにも荷担しないこと。
3.そ の職務の賃金格付区分に関心を示さないこと。
4.面接中,礼儀正しく,いんぎんに振舞うこと。
5.作業者を「言い負かすJようなことはしないこと。
6.個人的な好き嫌いによって,判 断を左右されないこと。
7.没個性的であれ組織または作業の方法を批判したり,何 らかの変更・改善を示唆しようとしてはならないこと。
8.作業者に話かけるのは,その監督者の許可を得た場合に限ること。
9.職務データ,とくに技術用語,専門用語については,監督者または部門の長に当たって確認すること。
10.適当な事業所職員に依頼して,完成した分析内容について校閲を受けること。

 

分析員は,作業者の作業ぶりを観察したり,面接しながらメモをとるべきであるが,しかし,できるだけ目立たないようにやり,とったメモは,面接時の会話と結びつくようにすべきである。効果的にメモをとるための具体的なやり方を若千示唆すると,次のとおりである。

1 メモは洩れなく ,読み易いものでなければならないし,職務分析票の作成に必要なデータを含んでいなけれはならない。
2.メモは,職務に含まれる課業と,完全な職務分析にするために必要な情報項目にしたがって,論理的に組織立てられているべきである。
3 メモは,その職務に関する事実だけを内容とすべきで,遂行作業とそれに必要とされる労働者特性を強調したものであるべきである。不可欠な情報を伝える単語,語句,文章だけに限るべきである。

作業者を対象に観察と面接を行った後で,分析員は通常,監督者と面接して,一定タイプの追加情報(たとえば,所要の職業経験,訓練,他職務との関係などの取り扱いに関するものなど)を入手したり,疑問な点があればそれをはっきりさせたりする。

作業の安全,高いレベルの騒音,言葉の障壁などの要因が,分析員と作業者の間の日頭でのやりとりを妨げるような場合や,原則として作業者との面接が禁止されている時,および観察対象職務の記述や説明が監督者の方がよく出来る時には,作業者よりもむしろ第一線監督者を面接対象者にすべきである。

収集データの完全さの確認
観察では,時に作業者の活動を一部しかとらえられないことがある。活動の全範囲が,数時間,数日,数週あるいはそれ以上の期間にまたがることがあるからである。

質問することによって,作業者が観察期間中に見られなかった多くの活動に従事していることが判明することも,じばしばある。一部の活動は,作業場所や時間帯 (たとえば,作業交替の初めや終わり)のちがいや,あるいは遂行頻度が低いために観察できない場合があろう。

観察または面接結果の記録
分析員が職務を観察しようとしたり,あるいは作業者 面接をしようとするならば,メモをとったり,その他最終産物である職務記述書を後で作成する際に使用できるように,その記録をとっておくべきである。

記憶力の良さは,職務分析研究にとっては明らかに貴重な資質ではあるけれども,それに依存じすぎるべきではない。しかしながら,作業者に面接している時には,分析員はできるだけ目立たないようにメモをとるべきである。

ノートをとることの他に,分析員は,テープレコーダーの使用や幾つかの職務に関しては,カメラの使用を考慮してもよいであろう。しかしながら,そうした道具の使用は,その職務分析の性格や目的から正当化され,また作業者あるいはその監督者にその使用を通知し了承された場合に限るべきである。

さらに幾つかの職務に関しては,分析員が機械または装置のおおまかなスケッチを描いたり,あるいはそれらに関する既存の印刷物を入手した方がよいこともあろう。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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